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 ★ニュース『生きいき憲法』



学習講演会17の記録

「始 動した憲法審査会の議論の特徴
と私たちの課題



日程:2012年2月27日(月)18:00〜20:20
会場:けんせつプラザ東京
講師:高田健氏(九条の会事務局、許すな憲法改悪・市民連絡会)
参加者:26人

憲法審査会の始動

 国会で憲法審査会の議論が始まっている。私は憲法調査会(2000〜05年)を毎回傍聴したが、昨年秋からの憲法審査会も毎回傍聴している。07年の安 部内閣当時、憲法審査会は国会で強行採決された憲法改正手続法が設置を定めたものだが、その制定の過程(強行採決など)や「附則」および18項目の「附帯 決議」が付いたことに見られるように重大な欠陥をもった法律であることから国会内外で厳しい批判を浴び、4年以上にわたって始動できないできた。しかし、 政権交代後、菅政権が10年参院選で敗北して衆参両院がねじれ状況になった後から、自民党に妥協して審査会始動への動きが再燃した。そして3月11日の東 日本大震災と福島第一原発事故の危機に乗じるように、憲法審査会を民自公3党の政治的取引で、社民・共産両党の反対を押し切って始動させた。
 憲法調査会の時とは雰囲気が違う。当時と比べて政党が多くなったことから、改憲を求める発言が非常に多い。審査会全体が改憲の雰囲気だ。

非常事態条項導入のねらい

 自民党の委員が相次いで3・11大震災と関連して、政府の対応の立ち遅れの原因を「憲法に非常事態条項がない」「国家緊急権規定がない」を理由に欠陥憲 法だと指摘することで、改憲の緊急性を主張している。参考人として招かれた中山太郎元衆院憲法調査会長や、関谷勝嗣元参院憲法調査会長も同様の意見を述べ ている。
 中山太郎の「緊急事態に関する憲法改正試案」(11年秋)は、@「地震、津波などによる大規模な自然災害、テロリズムによる社会秩序の混乱その他の事態
に対応する(あえて「戦争」を入れない)、A総理大臣が緊急事態を宣言し、行政機関の長(防衛大臣も含む)を指揮監督し、自治体にも指示を出す。B通信の 自由、居住の自由、財産権など人権の安易な制限と政令で行う政治が主な内容。政令で行う政治がやられるとどうなるか、を考えてもらいたい。
 非常事態条項は、94年の読売新聞の憲法改正試案が「内閣総理大臣による緊急事態宣言」を、05年の民主党「憲法提言
も「国家緊急権の明示」を、そして昨年5月の読売、産経社説も「国家緊急権」導入を強調。3・11以降、この訴えが特に強くなり、参院の憲法審査会は3月 以降、「大震災と憲法」を取り上げる予定。しかし、今の憲法に国歌緊急事態条項がないのは9条があり、日本は侵略戦争を反省したから当然のことだ。

96条改憲のねらい

 また、憲法審査会では硬性憲法たるゆえんと言われる96条の憲法改正規定(国会議員3分の2賛成)の問題点を指摘することで、改正要件の緩和を主張する 意見が過半数を占めている。

「新しい人権」の主張

 改憲論としては言い古された感もあるが、環境権やプライバシー権など「新しい人権」の導入を主張する改憲論も、公明党や民主党の委員を含め根強くみられ ている。

4・28をターゲットにした自民党改憲推進本部の動き

 本日はこれを強調したい。1月の自民党大会は、「新しい憲法改正案
を提案し、その実現を目指すとして、「憲法改正はわが党の立党の精神。本年4月28日は、わが国が主権を回復したサンフランシスコ講和条約発効から60年 にあたる。それまでにわが党は立党50年の05年に発表した『新憲法草案』を踏まえ、新たな憲法改正案を策定し、国会への提出を目指す」と決議。そして、 自民党の憲法改正原案の概要が2月24日に分かった。
その内容は、@現行憲法が「象徴」とする天皇を「元首」と位置づけ、国旗国歌を「表象」と明記する(表象は象徴と同じ意味)。A武力攻撃や災害などに対処 するため、首相の権限を強化する「緊急事態条項」を創設する。B9条の「戦争放棄」は維持するが、自衛隊を「自衛軍」として明確に軍と位置づけ、日本周辺 海域への中国の進出などを受けて「自衛軍」の役割に領土領海の保全を加える。C集団的自衛権の行使を容認し、軍事裁判所の設置も盛り込む。D衆参各議員の 3分の2以上とする憲法改正の発議要件を「2分の1以上」に緩和する。以上、憲法の改正には限界(平和主義や人権保障は改正できない)があるのに、自民党 は「改正」の名で新しい憲法を作ろうとしている。

跋扈する改憲新党

石原都知事は2月21日、都内のホテルで開かれた都議会自民党の「新春のつどい」で、日本国憲法について「自民党に頑張ってもらって、破棄したらいい。首 相が決めたら、政党が決めたら、内閣が決めたらできる。改正しようとすると、国会の3分の2の議決とか、国民投票がいる」と述べ、改正手続きを経ずに破棄 すべきだとの考えを示した。また、橋下大阪市長は2月24日、戦争の放棄をうたった9条の改正について「一定期間議論して、日本人全体で決めなければいけ ない」「他人を助ける際に嫌なこと、危険なことはやらないという価値観。国民が(今の)9条を選ぶなら僕は別のところに住もうと思う」と述べ、2年かけて 国民的議論をした上で国民投票を実施すべきだとの考えを明らかにした。また、Twitteで「世界では自らの命を落としてでも難題に立ち向かわなければな らない事態が多数ある。しかし、日本では震災直後にあれだけ『頑張ろう日本』『頑張ろう東北』『絆』と叫ばれていたのに、がれき処理になったら一斉に拒 絶。全ては憲法9条が原因だと思っています。」とつぶやき、爆発的なブームになっている。橋下市長は次期衆院選の政権公約となる「船中八策」に、憲法改正 手続きを盛り込む方針だ。

私たちの課題

 憲法9条をめぐる情勢は緊迫してきているから、この数年間の運動では追いつかない。特に世論に働きかけるためにも、ネジを巻き直して07年当時の運動を 盛り上げていかなければならない。九条の会を活性化し、安倍内閣の暴走と草の根から対決した状況を再現していこう。(島田修一記)


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