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学習講演会の 記録
  「激動の中の憲法 ─9条と25条─」 

日時 :4/13(月)18:30〜20:50
場所 :豊島区民センター(コアいけぶくろ)6階 文化ホール
講師 :渡辺治氏(九条の会事務局、一橋大学教授)
参加者:約190人

渡辺治氏の講演を要約して紹介します(文責・事務局)。

1. 安倍政 権の改憲策動の挫折を麻生政権はどう打開しようとしているか?
  • 安倍内閣は改憲支持の世論があると思って大胆に「任期中の改憲」を打ち出したが、それは1)安倍の復古主義(戦前美 化)的な改憲 論を国民が警戒したこと、2)小泉構造改革の矛盾の爆発が政権を揺さぶったこと、3)九条の会の運動の広がりが世論を変えたこと、という3点により挫折し た。
    2004年6月に九条の会ができて以来、2005年、2006年、2007年、2008年と九条の会は2000、5000、6000、7000と増えてゆ き、逆に改憲支持の世論は60%、55%、46%、42%と落ちていった。
    九条の会運動の新しい特徴は1)革新から保守までのもっとも広い共同、2)中高年パワーの強さ、3)個人のイニシアティブによる運動、という点にある。
  • こうした挫折を打開するために改憲の新戦略が進められつつある。
    1)民主党との協調体制の再建。新憲法制定議員同盟の幹部に鳩山・前原を向かえ、民主党を改憲協議に巻き込む。
    2)解釈改憲(海外派兵恒久法、海賊対処派兵法)を先行して進める。これは民主党対策としても、アメリカ対策としても有効。
    3)改憲の国民運動を作りつつ、九条の会への規制を強める。新憲法制定議員同盟の地方支部を作り、全国各地の青年会議所でシンポジウムを開きつつ、九条の 会の活動には会場を貸さないなどの規制を加える。
  • 2009年4月の世論調査で改憲支持が再び52%に増加。
    これは、九条の会の伸びが鈍化したこと、復古主義的な改憲を引っ込めて北朝鮮脅威論や国際貢献(海賊船対策)を前面に押し出す戦略が奏功していることが反 映している。
    まさに今、新しい段階での綱引きが始まっている。
2. 構造改 革の行き詰まりを麻生政権はどう打開しようとしているか?
  • 日本では構造改革の矛盾がヨーロッパ以上に激しく噴出した。日本にはヨーロッパのような福祉国家がない上に、その代 わりとして日 本社会の安定を支えた3本柱(企業福利、自民党の利益誘導政治、貧弱ながら社会保障制度)を構造改革がばっさりと切り倒したからである。この矛盾が日本で は餓死、自殺、犯罪、そして地方の衰退という形で顕在化している。参議院選挙の結果を見ると地方での自民党の支持率の低下が歴然としている。
  • こうした状況に対して「反貧困」「構造改革反対」の運動が広がっている。
    その特徴は1)個人加盟型の運動(青年ユニオン、派遣ユニオン、反貧困ネットなど)が、2)既存の労働組合運動(ナショナルセンターなど)と協同して、 3)政治・政党を動かすようになっている(年越し派遣村運動、後期高齢者医療制度反対運動など)ことである。
  • 麻生内閣はこうした事態に対して、構造改革を改めるのではなく、破綻に対して一時的な手当てをしつつ、漸進的に進め ようとしてい る。社会保障費削減を一時的にストップしたり、15兆円という大胆な財政支出をしたりするが、これらはいずれも時限付きの措置であり、制度は何も変えるつ もりがない。さらに財源として消費税アップを目論んでいる。
3. 衆議院 選挙で改憲や構造改革はどうなるか?
  • 衆議院選挙が近づくにつれ政権交代待望論が語られるようになっているが、今の民主党を見る限り、政権交代で政治が良 くなるとは思 えない。
    民主党は自民党と比べて基盤が弱い分、国民の世論・運動に敏感ではあるが、もともとは保守二大政党制をめざして作られた党である。それが世論の動向により 小沢代表の判断で路線変更したのだが、その変化も「独裁」的に行われたものであり、現在、再び自民党との協調に向かおうとしている。
  • 衆議院選挙の結果、改憲や構造改革の動きがどうなるか。あくまで個人的見解だが、次のように考えている。
    1)自公与党が過半数の場合→構造改革については財政出動をしつつ、その財源確保として消費税増税がやられ、民主党を切り崩して、派兵恒久法など改憲を推 進するだろう。
    2)民主党単独過半数の場合→構造改革については農家所得保障など民主党的な政策をすすめつつ、やはり消費税増税がやられ、テロ新法への民主党対案を軸に 改憲を推進。
    3)共産党・社民党を合わせて野党過半数の場合→共産・社民に託された世論を尊重せざるを得ず、改憲や消費税が先送りにされる可能性がある。
    しかし、この場合でも自民・民主の「大連立」で突破しようとする可能性も否定できない。
4. 改憲を 阻み、憲法を実現するための運動を
  • 9条改憲を阻むためには、解釈改憲(海外派兵恒久法、海賊対処派兵法)反対を焦点として据える必要がある。
    また九条の会を発展させるためには、幅広い市民が参加できる個人参加の会であるという特徴・役割を明確にすること、復古主義的改憲だけではなく、国際貢献 論や北朝鮮脅威論にどう対抗するかに留意して活動に取り組むこと、若者自身が力を発揮するようサポートすること、地域ごとの特徴と到達をよく分析して運動 を広げること、などが大切である。
  • 25条(反構造改革)では、これへの関心や世論は高まっているが、改憲がされなくてもすでに骨抜きにされている点で は9条以上に政 治と立法の力が必要となる分野である。

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